目次
遠回りの楽しさ
どうもuwemaです。
さて、今回は「複雑な経路の乗車券」について解説していきます。
鉄道を利用する方の9割9分は単純に最短経路で目的地に向かうことになるはずですが、世の中には変わり者が一定数居るもので、わざと遠回りをして目的地に向かう需要もあるわけです。
上の乗車券は実際に筆者が使用したものです。
仙台市内から大阪市内行きの、ごく普通の切符に思えますが、そのすぐ下の「経由」を御覧ください。
「東北・常磐・中央東・中央西・東海・名古屋・新幹線・新大阪」と記載されています。
これを地図にしてみましょう。
このルートは非常に遠回りでしたが、乗りたかった特急にはすべて乗車することが出来ました。最短の経路では4時間ほどで到達できる距離を私は1日以上かけてこのルートを制覇しました。
今回はこのような複雑かつ大回りな経路の乗車券について詳しく解説していきます。
複雑経路・大回り経路とは?
複雑経路・大回り経路を知る前に、まずは単純経路を知る必要があります。
上の図のように、遠回りなどはぜずに直接目的地に向かう経路が単純経路です。
では続いて複雑経路です。
一般的な経路ではなく、わざわざ遠回りしていきます。これらが俗称「複雑経路」というわけです。
この複雑経路の発展が「大回り経路」です。
大回り経路では、発駅と着駅を至近経路に設定し、目的地であるB駅は途中下車を利用して訪問するということになります。
例を示しましょう。東京から京都の単純経路は東海道新幹線経由(下の図)となります。
これを複雑経路(大回り経路)で乗車するとこうなります。大回りでは、発駅と着駅は同じ駅に出来ませんので、この場合は発駅東京、着駅上野で表示しています。
そんな大回り経路の極点に位置するのが「最長片道切符」です。
7万円以上のその価格もさることながら、経由駅を極めたもはや芸術品扱いのこの切符で旅をすることが、乗り鉄の夢でもあります。
複雑経路の運賃
では、単純経路と複雑経路(大回り経路)とでは運賃に変化はあるのでしょうか?
結論を申しますと、「大いにある」となります。
JRの運賃は距離によって決定します。
発駅・着駅が同一であっても、実際に乗車する経路に則って運賃が決定されますので、そりゃ皆さん単純経路だわなというわけです。
しかし例外があります。大都市の近郊では、線路が入り乱れており、最短経路や乗り換えが少ない経路など、様々な経路をたどることが可能です。
しかしいちいち経路ごとのキロを計算して切符を売るのは非常に面倒です。
そのため、指定した近郊区間のみ、単純経路と複雑経路(大回り経路)の運賃は同じになります。
大都市近郊の大回りについては別の記事でも解説していますので、ぜひ御覧ください。
なぜ複雑経路(大回り経路)を選ぶのか
ではなぜ一見すればデメリットしかない複雑経路(大回り経路)を選ぶ人が居るのでしょうか?
理由は主に2つあります。
- 鉄道が好きだから
- 安いから
となるわけです。
1番の鉄道好きは理解できるとしても、2番は理解できませんよね。さっきと真逆のことを言っています。
しかしあくまでもこれは片道の話であって、往復となれば話が変わってきます。
JRや大手私鉄などでは「遠距離逓減制」を採用しています。
長距離を乗車すればするほど1キロあたりの運賃が安くなるというわけです。
ですから、単純に往復する(切符を2枚買う)のではなく、複雑経路で大回りするようなルートを取る(切符1枚)ほうが、前者よりも後者が1キロあたりの単価が安くなるというわけです。
切符は大都市近郊区間内の利用ではない限り途中下車が可能ですので、目的地を経由地に指定するというわけです。
また、観光地を経由地に指定して、帰宅がてら観光なんてことも出来ちゃいます。
ですから、寄り道してみたいときや、往復同じ路線だと飽きてしまうという方には、ぜひ複雑経路や大回り経路を試してもらいたいです。
有効期間はどうなる?
切符には有効期間が設定されています。「複雑経路は一枚の切符だから、有効期間内に帰れるか心配」との声が聞こえそうです。
しかしご安心ください。
切符の有効期間は、乗車する距離に応じて増やされます。有効期限切れとなる事例はほとんど考えづらいです。
詳しい期間については、以下のサイトをご確認ください。
途中下車できるの?
そもそも原則として、JRの乗車券は途中下車が可能です。
しかしながら、例外として、大都市の短距離利用などで途中下車が不可能(下車前途無効)となっています。
他にも、発着特定市区内(後で解説)の乗降では下車前途無効となります。
下の図を御覧ください。
A駅からG駅までの経路ですが、A・B駅が特定都区市内、F・G駅が特定都区市内となっています。特定都区市内外のC・D・E駅では途中下車が可能です。
しかし、A駅から乗車し、B駅で下車をしてしまうと、そこで切符は使用終了となります。
また、同じく特定都区市内のF・G駅でも、同じことが言え、例えばF駅で下車をしてしまうとG駅にはたどり着けなくなります。
券面には「券面表示の都区市内各駅下車前途無効」と記載されていますので、注意しましょう。
複雑経路の注意点
楽しそうな複雑経路(大回り経路)ですが、注意点があります。
まず下の図を御覧ください。
経路としては、A→M→D→C→M→Bとなります。
同じ路線は乗車していませんし、一見OKに見えますが、アウトです。
M駅を2回経由していますので、経路としての遠回りが認められないのです。
もちろん、同じルートを2回通ることもNGです。
経路を考える際は、よくよく確認しましょう。
区間外乗車の特例
複雑経路の乗車は区間外乗車してしまうことが怖いですが、いくつか特例が設けられています。
分岐駅通過の特例
下の図を御覧ください。賢い読者の方なら、これはアウトだと、どこからどう見てもアウトだと思われるかもしれません。
実際、アウトです。
経路はA→P→B→P→Cとなります。B駅とP駅の間で経路が重複しています。
しかしこれで困ってしまうお客さんが居ます。
例えばA駅→B駅の間をP駅を通過する特急列車に乗車した場合、P駅で降りたくても降りることが出来ないのです。
逆も然りです。
よって、分岐駅を通過する列車に乗車した場合かつ、規約に記載された区間であれば特例で区間外乗車(P駅⇔B駅の乗車)が認められます。
言葉の通り、「区間外」乗車となります。よって、「本来はA駅からP駅を経由してC駅に向かいたかったど仕・方・な・く特例でB駅⇔P駅の乗車を認めます」というわけです。ですから、B駅での途中下車は認められません。
この区間外乗車が認められている区間は、以下のサイトを参照してください。
区間外乗車の特例
先程の図を再掲します。
先程の特例は、P駅を通過する列車に乗車する場合のみ利用可能ですが、P駅で乗り換えが可能な場合であったとしても、B駅⇔P駅の利用が可能になる区間が定められています。
先程の特例と同様、B駅での途中下車は出来ません。
数は少ないですが、ぜひ確認してみてください。
特定都区市内における折り返し乗車の特例
特例が多くてややこしいですが、更に参りましょう。
長距離の乗車券を購入する場合、「大阪市内」や、「仙台市内」などと表記されます。
これは、乗車駅や降車駅を定められた区間の中から自由に決められるというもので、この仕組みは非常に便利です。
この決定できる駅の範囲を「特定都区市内」と言います。
この特定都区市内発着の切符を持っていれば、列車を乗り継ぐためにこの特定都区市内であれば、経路が重複していても構わないというものです。
なぜこの特例が存在するかを説明していきます。
上の図を御覧ください。A駅からB駅を経由して、折り返して最終的にはC駅に向かうルートです。
ここではA・B・C駅が全て同じ路線であり、B駅とC駅の区間は重複が発生しているものとします。
仮にA駅とB駅の区間が新幹線だとすればどうでしょう。
そもそもC駅に新幹線が接続していない場合も多いですよね。
新幹線は「在来線の拡張」扱いなので、東海道新幹線であれば、並行する東海道本線を乗車した扱いになります。
つまりC駅で降りようがないのに、C駅を新幹線で通ったとみなされるわけです。
これでは流石に不憫だということで、B駅⇔C駅の重複乗車が認められているという訳ですね。
複雑経路(大回り経路)乗車券の作り方
さて、複雑経路(大回り経路)の仕組みはご理解いただけたでしょうから、いよいよ複雑経路の検索方法を解説していきます。
1.路線図を見てあらかたの見当をつける
まずはJRの路線図を調べてみましょう。
検索すればすぐにヒットします。
行きたい場所を点で示して、一筆書きになるようにルートを決めてみましょう。
2.適宜修正
日本には様々な鉄道路線があります。本数も、所要時間も様々です。
自分が指定したルートが一日数本のローカル線を経由するものであれば、(その路線上に目的地がない限りは)なるべく幹線、本数が多い路線を経由するものに変更するほうが無難でしょう。
これの調査に便利なのが「時刻表」です。
本数がすごくわかりやすいです。また、旅先でも急な予定変更に対応しやすいです。
1000円もせずに購入できますので、ぜひ購入を検討してみてください。
3.乗り換え案内ソフトで経由駅を指定、ルート算出
まずは立ち上げる
乗換案内ソフトを何でも良いので立ち上げてみてください。
ここではYahoo!乗換案内で例を示します。
「出発駅」「到着駅」以外に、「経由駅」を指定できます。
ここでいう「経由駅」は、目的とする駅でなくてもOKです。要は乗換案内ソフトに、「この路線を経由するルートで検索してね」とわかってもらえれば良いのです。
上の例では、大阪東京間を北陸・東北を経由して乗車したいので、「金沢」「仙台」「いわき」を指定しています。
こうすることで、自分が意図したルートで検索が可能です。
ちなみに、長距離の大回り経路では、ソフトが飛行機や高速バスも提案してきますので、それが無いようにあらかじめ鉄道以外の選択肢を外しておきましょう。
これで理想の経路が表示されれば最高です。
意図しないルートを提案された場合
しかしながら、意図しないルートを表示する場合もあります。
対処法としては、
- 経由駅を増やす
- 経由駅を見直す
の2つが考えられます。
経由駅を増やせば確実になりますし、経由駅も、ほかの路線が乗り入れていない駅にすれば、確実にその路線を利用したいという気持ちがソフトに伝わります。
しかし、経由駅の数には限界があります。
例で示した「Yahoo!乗換案内」では3つ、「NAVITIME」でも3つ、「ジョルダン」では4つまで指定できます。
「ジョルダン」は経由駅の他にも様々な細かい調整が可能ですので、私も普段は「ジョルダン」の有料プランを愛用しています。
しかし、4つでも足りない場合があります。
その場合でも救済策はあります。
PC限定かつ非常にマニアックなソフトウェアですが、「MARS for Windows暫定版」をおすすめします。
経由駅はほぼ無限に指定可能と言っても良いでしょう。
経由路線も指定可能です。
時刻検索は不可能ですが、運賃計算には重宝します。
しかしながらこちらはかなりの専門性を有するソフトです。
画面を見てもらえば分かる通り、時刻ガン無視で経由路線とその運賃のみが表示されます。勇者はぜひご利用ください。
4.発券
ルートが完成し、日程や金銭的な目処が立ったら、いざ発券です。
乗車券を発見する方法は様々ありますが、複雑経路(大回り経路)の購入は有人窓口がベターです。
乗車券でも数万円になるケースもザラですので、株主優待などを利用してうまく購入しましょう。
さて、有人窓口の発券ですが、対応される駅員さんは単純経路前提で発券されます。当たり前です。
「東京から新大阪に行きたいんですけど」
「かしこまりました。9時48分発、のぞみ号でお取りしますね~窓側でよろしいでs…」
「あ、ごめんなさい、一旦新青森に行ってから秋田・新潟を経由して高崎乗り換えで金沢、そこからサンダーバードで京都、そこから山陰本線と山口線で新山口まで行って、そこから山陽新幹線で新大阪までお願いします」
なんてことは流石に避けたほうが良いですね。有人窓口があるような大きな駅では、お客さんも多いですから、迷惑以外の何物でもありません。
そこで登場するのが、紙です。
あらかじめ経由路線と指定したい列車などを記入しておき、駅員さんに渡しましょう。
それでも時間がかかりますので、そもそも混雑する時間帯に窓口に行かないことはもちろん、一旦オーダーを出した上で数日後に受け取りに行くという方法もあります。
5.なくさない
こうして数々の試練を乗り越えて獲得したオーダーメイドの切符。一番恐ろしいことが紛失であるということは言うまでもありません。
なくせば、どうしようもありません。
私は財布の奥底に大切にしまいますが、財布がなくなれば大変なので、ポーチに紛失防止タグと一緒に放り込んでおくと良いと思います。
最近はカード型のタグもありますので、念には念を入れておきましょう。
6.楽しもう
楽しみましょう!それ以上でも、それ以下でもありません。
最後に
以上が、複雑経路(大回り経路)の解説となります。
この記事を書くにあたり、2000文字ぐらいかなと思っていましたが6000文字超えていました。
それぐらいややこしくて発券もひと苦労の切符ですが、それほど愛着が湧き、完乗の喜びもひとしおです。
単なる往復でもないので、今見た景色が二度と流れないというロマンもあります。
ぜひチャレンジしてみてください。