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aboutひのとり
特急ひのとりは、近鉄が大阪難波~近鉄名古屋間を中心に運行している特急です。
大阪と名古屋という日本でも指折りの都市間の移動手段は、現在でこそ高速バスやマイカーなども有力候補ですが、その昔は専ら鉄道の役目でした。
将来安泰かと思われた近鉄の名阪特急でしたが、国鉄が放った強力な一手で窮地に追い込まれます。
1964年、東海道新幹線が東京~新大阪間で開業します。
名阪間も新幹線によって結ばれることになり、それまで2時間以上を要していた名阪間の所要時間は1時間強にまで短縮されました。
この時期、近鉄は新幹線と正面から対抗するのではなく、新幹線と協力して大阪・京都・名古屋から奈良や伊勢志摩へ乗客を誘導する作戦に出ました。
伊勢志摩方面の各路線が大幅に増強されたのもこの時期です。
要は稼ぎが見込めない名阪特急よりも、他路線の特急に注力することにしたというわけです。
1980年代に入り、国鉄の財政がいよいよ回復不能なレベルにまで悪化した際、国鉄は運賃値上げを何度も実施しました。しかも、運賃の上げ幅は現代の比ではなく、平気で倍の運賃に値上げ…なんてこともザラです。
そんな状況で、新幹線の運賃・料金も当然上昇し、気づけば近鉄の名阪特急とかなりの差が開いていたのです。
少し時間がかかっても良いから、安くて快適な近鉄が良い。
そんな感じでお客さんが近鉄に戻ってきたのです。
近鉄はその需要に応えるべく、1988年に「アーバンライナー」をデビューさせます。
そんなアーバンライナーも、登場から30年以上が経過し、名阪間の顔としてはすこし物足りなくなってきました。
そこで近鉄は、最新技術を惜しみなく投入した新時代の車両、「ひのとり」をデビューさせたというわけです。
未だに活躍するアーバンライナーの記事も書いていますので、よろしければ御覧ください。
ひのとりのデビュー時に特に話題となった「プレミアムシート」は、新幹線最上級車両の「グランクラス」にも匹敵する快適性を誇ります。
大量輸送に特化した新幹線と快適性を追求する近鉄と、それぞれ独自の発展をこれからも続けることでしょう。
運行区間
例外として、平日朝などに、車庫からの回送を兼ねて近鉄奈良~大阪難波などを営業運転します。
奈良→大阪難波を運行するひのとりの乗車記はこちらから御覧ください。
停車駅
大阪難波・大阪上本町・鶴橋・(大和八木)・津・(白子)・(近鉄四日市)・(桑名)・近鉄名古屋
()内の駅は一部列車が停車します。
名阪特急以外の運用では、通常の特急と同じ停車駅です。
使用車両
80000系
ひのとりのデビューに合わせて新造された新型車両です。
車両編成
6両編成または8両編成で運行されます。
いずれの場合も、両端の車両(1・6号車または1・8号車)がプレミアムシートとなっており、それ以外はレギュラーシートとなっています。
料金体系
乗車には、乗車券・特急券・特別車両券が必要です。
特別車両券の料金はプレミアムシートとレギュラーシートによって変わってきます。
大抵の場合、特急券と特別車両券は同じ券面になっています。
少しややこしいですね。他にも近鉄特急の料金体系について解説していますので、こちらも合わせて御覧ください。
車内サービス
フリーWi-Fi
すべての車両でフリーWi-Fiが利用可能です。
カフェスポット
車内にはちょっとした食品や挽きたてのコーヒーを販売するカフェスポットが設置されています。支払い方法は現金のみで、1000円札の両替機もあります。
車内紹介
外装
正面
アーバンライナーから受け継いだ流線型のデザインと、現代的な灯火です。フロントガラスはしまかぜと異なり、平面的で視界を確保しやすい構造です。
側面
深い紅色を中心に、金色の帯とロゴが高級感を演出します。快適さを追い求めた近鉄特急ならではのデザインでしょう。
行き先表示器
多色対応のデジタル行き先表示器が設置されています。
内装
プレミアムシート車内
車内全景
2列+1列の3列で恰幅の良い座席が並びます。内装も高級感あふれる造りです。
座席
取り扱い説明書
座席下部に車両の案内や座席の設備などが記載された説明書が入っています。存在を知らなければ気付かない人も多いと思います。
リクライニング
リクライニングをフルで倒してみましたが、マッサージチェア並みの快適さを誇ります。人間にとって心地の良い態勢というものが存在するようですが、それにかなり近い態勢になることが可能です。
ひのとりプレミアムシートにはバックシェルが装備されています。座席の背面にあらかじめ殻(シェル)を設置しておくことで、後席を気にすることなくリクライニングが可能となっています。
リクライニングは肘掛けに設置されているボタンで調整が可能です。このボタンでは他にも紹介するたくさんの機能が操作できます。
コンセント
肘掛けの側面にコンセントが設置されています。パソコン・スマホの充電も可能ですが、電圧が変動する可能性もありますので、注意しましょう。
テーブル
ひのとりのプレミアムシートには背面テーブルが設置されていません。
自ずと肘掛け内臓のテーブルのみになります。
このテーブルは一見ミニテーブルに見えますが、実は展開が可能で、展開した状態では下の写真のように13インチのPCも問題なく置くことができるサイズになります。
読書灯
読書灯が装備されています。点灯/消灯は、リクライニング操作ボタンと同じ場所に設置のスイッチで切替可能です。
フットレスト
フットレストは設置されていません。その代わりにレッグレストが設置されています。
レッグレスト
レッグ=脚を支える設備です。
前述のリクライニングと同様、ボタンで操作が可能で、リクライニングと併用することをおすすめします。展開すると足が地面から離れるので、靴を脱いで座ることだって可能です。
ドリンクホルダー
肘掛けの先端をスライドさせると、カフェスポットで購入したコーヒーなども置いておけるドリンクホルダーの登場です。結構わかりにくいです。
フック
バックシェル背面などにフックが装備されています。
シートヒーター機能
冬場に重宝するシートヒーターが装備されています。ON/OFFの切り替えは、リクライニングボタンの近くに設置のスイッチで行います。
取っ手
座席の取っ手には座席番号が記載されています。
枕
いかにもふかふかな見た目をしている枕ですが、実際、ふかふかです。
しかもこの枕には隠れた神機能がありまして、なんと折り曲げることが可能です。
この機能を知ったときは、使ってもつわかなくても変わらないと舐めていましたが、実際に折り曲げて使用してみると、非常に快適です。
頭が心地よくホールドされるので、余計な負担がかからずに済むというわけです。
カーテン
電動式のカーテンは無段階固定式(ベストポジションで固定できる)ですので、微調整が効きます。
上下は窓横のボタンで操作可能です。
窓
プレミアムシートに関しては、1座席につき1つの窓が割り当てられています。
プレミアムシートはハイデッカー構造のため、他の車輌よりも高い位置に座席があります。その影響で眺望は素晴らしいものになっています。
窓の高さも確保されているので、不満を感じることはないでしょう。
窓際
窓際には多少の物は置いておけそうです。しかし、構造上死角になりやすいので忘れ物には注意しましょう。
棚
座席上部の棚は一般的なものです。忘れものには注意しましょう。
座席番号
座席番号は前述の取っ手に記載されていますが、窓の上にも記載されています。
情報表示液晶
一般的な近鉄特急の情報表示液晶と比較してもかなり大きな液晶が設置されています。停車駅の乗換案内も表示され、多言語での案内にも対応しています。
その他の設備
トイレ
長距離特急ということもあってかトイレの数は結構あり、不安を感じることはないでしょう。
洗面台
清潔な見た目の洗面所が設置されています。ここで近鉄特急伝統のおしぼり(お一人様一つまで)をゲットできます。
ベンチスペース
気分転換や急な電話にも対応できるベンチスペースが客室の外に設置されています。
喫煙室(2024年3月で廃止)
喫煙室が設置されていますが、2024年3月1日から近鉄特急のすべての車両で喫煙室が廃止されます。
詳しくは、近鉄公式サイトをご確認ください。
ロッカー
鍵付きのロッカーが使用可能です。荷物置き場よりも安心して荷物を置いておけます。
もちろん無料で利用できます。
通常の物理キー式のロッカーと、交通系ICカードがカード代わりになるロッカーの2種類が設置されています。
ゴミ箱
客室の外に、ゴミ箱が設置されています。ゴミはゴミ箱に捨てましょう。
防犯カメラ
防犯カメラが設置されています。
非常用設備
非常用設備もきちんと搭載されています。
最後に
今回は、近鉄の看板特急である特急ひのとりの車内を徹底解説しました。新幹線より格安で、格段に上の設備を味わうことが出来ます。
大阪でのアクセスを考えると、近鉄は難波エリアに直接乗り入れているのに対し、新幹線は新大阪での乗り換えが必須となります。
この乗り換えの時間を含めると、実は時間面においてもひのとりはと新幹線いい勝負だったりします。
ぜひ一度ご乗車頂き、その快適性に垣間見える近鉄の本気を体感してみてはいかがでしょうか。